妊婦の必須成分「葉酸」
妊娠前〜妊娠期にかけて積極的に摂りたい栄養素として近年注目されるようになってきたのが葉酸です。
葉酸は、1941年にホウレン草の葉から発見されたため、葉酸と名付けられました。
この葉酸は、水溶性ビタミンB群の一種で、細胞の生成や再生を助ける働きをしますので、身体の発育に大きな影響がある栄養素です。つまり、お腹の赤ちゃんの細胞を生成し発育をサポートしたり、赤ちゃんへ栄養を送るための血液を作り出す働きもします。ビタミンB12と一緒に赤血球を作ったり、特にDNAという遺伝情報を作り、保つ細胞の根幹を作り出したりするため、赤ちゃんの新しい細胞がどんどん作られる妊娠期から授乳期の母体にはとても必要な栄養素なのです。
赤ちゃんに与える影響
細胞の生成に影響する葉酸が不足すると、細胞分裂が盛んな妊娠初期(4週〜12週)には、先天性疾患の二分脊椎症と呼ばれる、神経管閉鎖障害を発症するリスクが高くなります。あるいは、授乳期の不足の場合は、赤ちゃんの発育も遅くなる、とも言われています。
神経管閉鎖障害の神経管とは、脳や脊髄などの中枢神経の元になる集合体です。妊娠初期にこの神経管が細胞分裂して脳や脊髄などの神経細胞が作られていきます。この神経管の下部に閉鎖障害が起きると二分脊椎と呼ばれる状態になります。この状態になると脊髄の神経組織が脊椎の骨に覆われ無くなり、神経が障害を受け、下肢運動障害、排泄機能障害が起きる場合があります。
神経管の上部に閉鎖障害が起きる場合は、脳の形成が阻害されて無脳症になり流産や死産に至る確率が高くなります。
葉酸摂取の必要性
葉酸の摂取率が高い国では、神経管閉鎖障害の発症リスクが低いことが明らかになってきたことから、厚生労働省では、数年前から葉酸摂取を推奨するようになりました。
また、葉酸は過剰摂取しても、その影響による疾患も報告されていないので、摂取量が多少超えてしまっても、水溶性ビタミンであるため、尿と一緒に排出されるので、積極的に摂取することが望ましいといえます。
また、葉酸は赤血球を作り出す働きをするため、不足すると生活習慣病による心血管系疾患や悪性貧血(巨赤芽球性貧血)、免疫機能の減衰、消化管の機能異常の原因になります。
お酒をたくさん飲む人やアスピリン、避妊薬のピルを飲んでいる人も不足しやすくなるけいこうがありますので、妊婦だけではなく、一般の成人もしっかり摂取すべき栄養素です。
どれだけ摂取すればいいのか?
厚生労働省では、妊娠を望む人、妊娠中の人が摂取すべき葉酸の基準値を定めています。
その量は以下の通りです。
しかし、妊娠1か月前〜妊娠3か月前の最重要時期には400μgという量を食事で摂取するのはなかなか難しい量なので、厚生労働省では食事以外に葉酸アプリを摂取するよう推奨しています。
その理由は、葉酸は「身体に吸収されにくい」「熱に弱く調理で壊れてしまう」という特徴も持っており、普通の食事で摂取するには、その食品の5割程度に低下してしまうという、困難さがあるからです。
葉酸サプリを使うと、その吸収のしやすさから8割〜9割が体内で有効に働くと言われています。
妊娠初期は、つわりでただでさえ食べることができない時期ですから、サプリメントは、確実な葉酸摂取のための有効な手段と考えることができます。また、サプリメントであれば、それ以外に必要なビタミンやミネラルも一緒に含んでいるものもありますから、さらに良いですよね。
ただし、1日当たり1000μg(1r)以上の過剰摂取には注意することも付け加えられています。何事も食べ過ぎは良くないですからね。
不足するとどうなるの?
葉酸が不足すると、赤ちゃんに影響がでることは必要性でお話しましたが、妊婦さんにも様々な影響がでます。
妊娠すると、母体と赤ちゃんの分の血液を作らなければいけなくなり、妊婦は貧血になりやすくなります。葉酸が不足すると血液が作られにくくなって、心血管系疾患や貧血を起しやすくなります。更には、細胞生成の働きも減退するため免疫機能や消化管機能異常が起こります。
授乳期には、血液の生成が少なくなることから母乳の出も悪くなります。